美肌ケアやニキビ跡の治療の際によく目にする「ターンオーバー」。
ターンオーバーが不調だと、せっかくの日々のスキンケアの効果が無駄になるだけでなく、ひどい場合では肌に余計なダメージを与えてしまうこともあります。
ターンオーバーの理解なくして、美肌づくりは始まりません。
ここではターンオーバーの基本からそれを助ける生活習慣・食事・スキンケアなどについて見ていきましょう。
1. ターンオーバーとは
ターンオーバーは日本語では「代謝回転」と呼ばれています。
つまり、古い細胞や組織が「代謝」によって新しく「入れ替わる」ことを指します。
「新陳代謝」と言うと聞き慣れた表現になりますね。
それでも、肌が入れ替わると言ってもよくわかりませんよね。
まずは皮膚の構造から見ていきましょう。
皮膚の構造
外から見ると分かりませんが、私たちの皮膚は大きく3つのタンパク質の層でできています。
外から触れられる部分が「表皮」、その下には「真皮」、そのさらに下には「皮下組織」があります。
表皮
最も外側にある、厚さ約0.2ミリの極薄の膜です。
細菌などの異物の侵入を防ぎ、肌の水分が蒸発するのを防いでいます。0.2ミリとかなり薄い表皮ですが、なんとさらに4つの層に分かれています。
その一番外側、つまり直接外気に触れている部分を「角質層」と言います。
耳馴染みのある言葉だと思いますが、角質層が一体肌のどこにあたるのかを意識している方は少ないと思います。
真皮
約2ミリの厚さを持つ肌の本体とも言える層です。
コラーゲンというタンパク質が主な成分で、他にヒアルロン酸、エラスチンなどのタンパク質を含んでいます。
真皮のおかげで肌に水分が蓄えられ、弾力のある肌質になります。
皮下組織
一番深くの層で動脈や静脈が通っています。
そこから肌に栄養が供給され、逆に不要な物は老廃物として排出されます。主な成分は皮下脂肪です。
私たちの肌はこのような構造を持っていますが、この3層のうちターンオーバーをするのは「表皮」です。
表皮を構成している4層のタンパク質が次々と入れ替わることを、ターンオーバーと呼んでいます。
怪我をして、それがかさぶたとなり治っていくのもターンオーバーによって新しい皮膚に入れ替わっていくからなのです。
2. ターンオーバーの仕組みと周期
ターンオーバーの仕組み
ターンオーバーは「表皮の入れ替わり」であることはすでに説明しました。
次は具体的なターンオーバーの仕組みについてです。
繰り返しになりますが、表皮は4つの層に分かれています。
下から「基底層」「有棘(ゆうきょく)層」「顆粒層」「角質層」となっています。
一番下にある基底層は皮下組織から吸い上げられた栄養をもとに細胞分裂をしています。
分裂した細胞は形を変え成熟しながら表皮の各層を上がっていき、最後には無核(死んだ細胞)となって角質層に到達します。
角質層は、実は死んだ細胞の集まりのようなものなのです。
次々と新しい細胞が基底層から上がってきますので、角質層で役目を終えた細胞はアカやフケとして身体の外へとはがれ落ちていきます。
このサイクルがターンオーバーの仕組みなのです。
ターンオーバーの周期
それでは、一体どのくらいの周期でターンオーバーがおこなわれているのでしょうか。
よく言われているのは28日や1ヶ月ですが、これは20歳前後の人の場合になります。
この場合「基底層から顆粒層までを14日かけて上っていき、角質層で皮膚バリアとして14日間働いて剥がれ落ちる」という流れになります。
角質層でバリアとして働く期間はどの年代でも大体14日間ほどですが、加齢と共に新陳代謝が低下し、基底層から顆粒層まで上がっていくのに必要な期間が長くなる傾向にあります。
年齢と共に傷が治りにくくなるのもこのためです。
従って、例えば40代や50代ではターンオーバー1周期に40日以上かかるのも普通です。
また手や足などの末梢になるほど、血流が悪くなりターンオーバーが遅くなります。
個人差・年代差・部位差を考えると、ターンオーバーは28日~60日くらいの周期で行われていると言われています。
自分のターンオーバーの周期を知ることのできる角質チェッカーというものがあります。
これはプローブや赤外線で角質の状態をチェックすることで周期を知ることができる装置です。
安い物でも数万円と個人で買うには少し高いですが、エステサロンなどによく設置されているので施術のついでに調べてもらうこともできます。
気になる方は相談してみてください。
3. ターンオーバーの周期によって発生する問題
ターンオーバーは早くても遅くても肌に良くありません。
ターンオーバーは、正常な周期で繰り返し続けることがとても大切なのです。
加齢に伴いターンオーバーの周期は長くなりますが、それ自体は当たり前に起こることであり、問題ではないのです。
大切なのはその長くなった正常周期で正しく繰り返すことなのです。
ターンオーバーの周期が遅いことを悪いことと勘違いして無理矢理ターンオーバーを早めてしまうと、それが肌トラブルの元になります。
それでは、周期がずれてしまったときの問題を具体的に見ていきましょう。
ターンオーバーが早い場合
基底層で生まれた細胞は、その後各層でしかるべき準備を整えながら角質層へと上がっていきます。
ターンオーバーが早まってしまうと、その準備が整いきらない内に未熟な角質が皮膚の表面に出てきてしまいます。
小さく薄い未熟な角質は刺激に弱く痛みやすいので、角質の仕事である皮膚バリアの機能が十分に果たされません。
さらに角質が薄いと水分を保持する能力も低く、皮膚が乾きやすくなってしまいます。
また、バリア機能が弱まると汗や皮脂の分泌でそれを補おうとしてしまい結果的に肌荒れや敏感肌へとつながってしまいます。
部位別に肌トラブルを見ていくと、角質層が薄いまぶたや頬は、乾燥し皮膚が硬くなりやすいです。
比較的角質層が厚めのおでこや鼻のあたりは、皮脂の分泌量が増えベタついたり毛穴が黒ずんだりするトラブルが増えます。
ターンオーバーが遅い場合
ターンオーバーが遅れている状態とは、本来剥がれ落ちるはずの角質が肌に残り続けてしまっている状態のことです。
すでに角質層としての機能を失った角質が皮膚の表面を覆い、角質層が厚くなることで毛穴がふさがれてしまいます。
すると皮脂などが外へ出ることができずに詰まってしまい、それが肌のくすみの原因となってしまいます。
さらにその詰まった期間が長くなるとたるみやごわつきとなり、肌が硬く乾燥しやすくなっていきます。
4. ターンオーバーを正常化する方法
ターンオーバーは促進よりも正常化
先述の通り、ターンオーバーは早くすれば良いというのは間違いです。
ターンオーバーを正常な周期でキープすることで、肌はキレイになっていきます。
続いては、ターンオーバーの周期を正常にする方法を見ていきましょう。
質の良い睡眠をとる
ターンオーバーが進むのは寝ている間です。
したがって、質の良い睡眠は当然必要不可欠です。
ゴールデンタイムと呼ばれる午後10時から午前2時の間に睡眠を取るのがベストですが、無理にその時間に寝る必要はありません。
無理に寝る時間を決めてしまうと逆にストレスで眠れなくなってしまいますので、眠たくなったら寝るくらいの気持ちで、リラックスして布団に入りましょう。
また、寝る前の行動も睡眠の質や角質層に影響を与えますので注意が必要です。
例えば、洗顔などをせずに寝てしまうと、肌に汚れが付いたまま寝ることになるので余計なダメージを与えてしまいます。
必ず寝る前には洗顔をして綺麗な状態にしておきましょう。
また、寝る前の過度な運動もターンオーバーに使うエネルギーが不足してしまうのであまり良くありません。
ダイエットなどで運動をする習慣がある人は就寝の2〜3時間前には運動を終えるようにしましょう。
ストレッチ程度の軽めの運動ならば、身体がリラックスして眠りの質を高めるので、むしろ良いでしょう。
夜食もよくありません。
食べ物の消化には意外とエネルギーが使われています。
運動と同様にターンオーバーのためのエネルギーが取られてしまいますので、夜食は控えるようにしましょう。
最も良くないのが寝酒です。
アルコールの分解にはエネルギーだけでなく水分、ビタミンも消費します。
身体が乾燥し睡眠の質も悪くなるので、肌にとってはまさに百害あって一理なしです。
寝酒の習慣がある人は、それを控えるだけで肌質改善に繋がるかもしれません。
睡眠の質を高める方法については、こちらの記事もご参考にしてみてください。
ターンオーバーを正常化させる栄養素(食べ物)を摂取する
ターンオーバーを正常化させるのに必要な栄養素をご紹介します。
タンパク質
タンパク質は体内でアミノ酸に分解されます。
その後アミノ酸は体内で再び合成され、肌の弾力を支えるコラーゲンが作られることになります。
そのためタンパク質が不足するとコラーゲンの産生もストップしてしまうのです。
タンパク質には、肉や魚介類に含まれる「動物性」と大豆やナッツ類に含まれる「植物性」の2種類があります。
タンパク質は約20種類のアミノ酸で構成されていますが、動物性タンパク質を構成するアミノ酸バランスは人間が必要とするアミノ酸の割合と近いと言われています。
一方で植物性タンパク質には人間に必要な必須アミノ酸の一部が含まれていないため、植物性タンパク質だけの摂取ではアミノ酸のバランスが悪くなってしまいます。
かといって肉や魚ばかり食べていては脂質が増えてしまいますので、動物性も植物性もバランス良く取り入れることが大切です。
ビタミンA
ビタミンAは正常な細胞分裂をするのに必要とされています。
また、紫外線からの肌へのダメージを防ぐ力もあります。
しかし、紫外線から肌を守ったビタミンAはそのダメージで破壊され、細胞分裂を助ける働きはできません。
そのため、ビタミンAは日中からどんどん消費されていきます。
しっかりと補給してあげることが必要です。
ビタミンAはレバーやうなぎに多く含まれています。
にんじんやカボチャなどの緑黄色野菜に含まれるベータカロテンも体内でビタミンAに変換されるので、積極的に摂取しましょう。
また、ビタミンAは脂溶性ビタミンなので油と一緒に摂取すると吸収されやすい特徴があります。
油で炒めたり、サラダなどではオイルドレッシングをかけたりなど油を使った調理方法がオススメです。
しかし、ビタミンAは過剰摂取すると頭痛やめまい、場合によっては肝機能障害などの副作用があることが知られています。
通常の食事では過剰摂取にはなり得ないと考えられますが、サプリメントを摂取している場合などでは飲み過ぎないように気をつけましょう。
また、妊娠初期3ヶ月以内の女性では過剰摂取によって出生障害を引き起こす可能性があるとされていますので、気になる場合は医師と相談してみてください。
ビタミンB群
ビタミンB群は8種類のビタミンの総称になります。
それぞれに特性があり、バランス良く摂取することで高い効果を発揮します。
美肌づくりに特に効果的なのは以下の4つです。
① ビタミンB2
美容ビタミンとも呼ばれる、肌には欠かせないビタミンです。
新陳代謝を促進し肌や粘膜を健康に保つ効果があります。
運動や夜更かし、甘い物を食べ過ぎた後などに大量に消費されてしまうのでその際には意識して摂取するようにしましょう。
また、飲酒はビタミンB2の吸収を妨げるので注意が必要です。
豚や牛のレバー、ベーコン、牛乳、チーズ、卵、納豆、緑黄色野菜などに多く含まれています。
② ビタミンB6
アミノ酸とタンパク質の代謝を助ける「補酵素」として働きます。
免疫力を高める効果もあり、健康な皮膚や髪の成長を促進します。
ビタミンB6をしっかり摂取することで食べたタンパク質が効率良く吸収されるので肌が丈夫になる効果があります。
玄米、鶏ささみ、マグロ、かつお、さんま、にんにく、赤ピーマンなどに多く含まれています。
③ パントテン酸(ビタミンB5)
コラーゲンの作成を助けるビタミンCの働きを助ける効果があります。
不足すると肌荒れなどの症状が出ますが、普段口にする様々な所品に含まれているので余程の偏食でない限り意識せずとも不足することはほとんどありません。
牛肉、鶏肉、魚肉、牛乳、大豆、ビーナッツなどに多く含まれています。
④ ビオチン
タンパク質の代謝を助け、肌を丈夫にする働きがあります。
アトピー性皮膚炎の原因であるヒスタミンの発生を抑える力があるともされており、肌を守る効果が高いビタミンです。
タマネギ、鮭、牡蠣、牛乳、チーズ、卵、大豆などに多く含まれています。
ここで、ビタミンB群を食事で摂取する際に気をつけなければいけない点二つを紹介します。
一つは、ビタミンB群は水溶性ビタミンであるという点です。
つまり水に溶けるビタミンなので、水にさらし続けると食品から溶け出してしまいます。
スープなどにして水も一緒に摂取できるような調理がオススメです。
もう一つは、ビタミンB群は身体に貯蔵できないという点です。
一度にたくさん摂取しても余った分は尿として体外に排出されてしまいます。
毎日、こまめに摂取する必要があります。
ビタミンC
ビタミンCは真皮に働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促す効果があります。
皮膚だけでなく粘膜や血管にも作用するため、全身がビタミンCを欲していると言えるでしょう。
たくさん取ったつもりでも全身で消費されていくので、肌へと届くのはほんの一部です。
そのため意識して摂取する必要があるビタミンです。
不足すると、コラーゲンの生成がうまくいかず肌トラブルの原因になってしまいます。
赤や黄色のピーマン、パセリ、ブロッコリー、キウイ、柿、イチゴ、レモンなどに多く含まれています。
ビタミンB群同様水溶性ビタミンなので、調理の際には水につけすぎないようにしましょう。
ビタミンE
ビタミンEには、皮膚の血行促進や角質硬化を防止する効果があります。
皮膚の血行がよくなると栄養が隅々まで行き渡りますので、他のビタミンの効果も高くなり相乗効果が見込めるビタミンです。
ナッツ類、緑黄色野菜、魚卵、レバーなどに多く含まれています。
比較的カロリーの高い食品に含まれている傾向があるので、うまく野菜と組み合わせて摂取するのが良いでしょう。
また、ビタミンEは脂溶性なので摂取するときは油と合わせるとよいでしょう。
サプリメントなどで補給するのも簡単なのでオススメです。
亜鉛
必須ミネラルの一つで生物の成長には欠かせないにも関わらず、潜在的に日本人が不足しやすいミネラルの一つでもあります。
細胞分裂を助け、新陳代謝を活発化させる効果があります。
コラーゲンの合成も促進し、亜鉛無しでは健康な肌はあり得ません。
牡蠣、ニシン、甲殻類、赤みの肉、レバー、チーズなどに多く含まれています。
ビタミンCやクエン酸などと一緒に摂取すると吸収率が高まりますのでオススメです。
また、コーヒーは亜鉛の吸収を50%も低下させますので同時に摂取するのは避けましょう。
これらの栄養素を、普段の食生活で意識して取り入れるようにしましょう。
忙しくてどうしても不足してしまうという人は、マルチビタミンのサプリなどを活用して肌に必要な栄養をなるべく与えてあげるようにしてくださいね。
角質層を乾燥させないスキンケアを
角質層に外から与えてあげられる最も効果的なものは水分です。
角質層の乾燥はターンオーバーを乱しますので、日々のスキンケアでしっかりと保湿してあげることが大切です。
また、化粧や皮脂が残ったまま過ごしているとターンオーバーの妨げになってしまいます。
適切なクレンジングや洗顔をして、化粧水などで角質層を潤わせておくのが正しいターンオーバーには必要です。
化粧品はターンオーバーが一巡するまで同じものを使用する
ターンオーバーに効果のある化粧品があって、それを使い続けることができれば一番です。
しかし日本では医薬品医療機器等法という法律があり、医薬品でない化粧品などに「ターンオーバーを促進させる」などという直接的な表現を使うことが禁止されています。
そのため、いくらドラッグストアなどでターンオーバーの文字を探しても見つかりません。
それでも化粧品でターンオーバーを正常化に導く手助けをすることはできます。
ターンオーバーの正常化に効果的な化粧品としては、クリームのような肌表面にふたができるものが挙げられます。
あるいはワセリンのような油分があるものも良いです。
ターンオーバーの周期が早くなってしまった人は、次々と未熟な角質が表面に出てきてしまい乾燥や肌荒れを起こしています。
クリームはそれをしっかりと保護し、成熟した角質が肌を覆うまで守ってあげることができます。
ターンオーバーは1ヶ月ほどですので、化粧品もその期間辛抱強く使い続ける必要があります。
明らかに肌に合わない場合は別ですが、最短でもターンオーバーが一巡するまで同じ化粧品を使い続けると化粧品そのものの効果を実感することができます。
UVケア(紫外線対策)
ご存じの通り、紫外線は肌の大敵です。
紫外線は表皮にダメージを与えます。
傷つけられた表皮はそれを早く治そうとしてターンオーバーを早めてしまうのです。
そんな紫外線から肌を守る方法として一番に思いつくのはUVカットの化粧品です。
しかし、その使用にも注意が必要です。
UVカットの化粧品には金属類などの肌に良くない成分が多数含まれていますので、それが原因でターンオーバーが妨げられてしまう場合もあるのが問題です。
- 日傘や帽子など肌への刺激がないものでUVカットをする
- 紫外線の強い時間帯である午前10から午後3時までの間は可能な範囲で外出を避ける
など、生活習慣を合わせていくことで紫外線から肌を守る方法がオススメです。
4. まとめ
ターンオーバーの仕組みと周期、正常化へのポイントをご紹介しました。
スキンケアを丁寧にしていても肝心のターンオーバーが乱れていてはその効果も薄れてしまいます。
自分の肌のターンオーバーの正しい周期を知り、それをきちんと守っていくことが美肌への第一歩です。
高額な化粧品やサプリメントを買うよりも先に、まずは生活習慣を見直すことからはじめてみましょう。
ただし、ターンオーバーの性質上、その効果が出るのは早くても1ヶ月後です。
ターンオーバーの正常化には外面・内面からの角質層ケアを根気強く続けていくことが大切なのです。
そして、3ヶ月から半年と続けていくことで理想の美肌にたどり着くことができるでしょう。