普段気にかけていても、いつの間にかできている「シミ」に悩んでいる方も多いのではないでしょうか?
シミはある日突然ポンッとできたように感じますが、実は複雑なメカニズムによって作られています。
効果的にケアをするためには、シミができるメカニズムを知ることが大切です。
この記事ではシミができるメカニズムを詳しく解説していきましょう。
1. メラノサイトとメラニン色素
「シミ」と言ってもいくつか種類がありそれぞれ原因や形状、できる場所も異なります。
ただ、どのシミにも共通しているのはメラニン色素が沈着した状態だということです。
シミの正体がメラニン色素であることはよく知られています。
そのメラニン色素を作り出す親玉とメラニン色素の役割などについて見ていきましょう。
① メラノサイトとは
メラノサイトはメラニン色素を作り出す細胞で、色素細胞とも呼ばれています。
私たちの肌は外側から「表皮」「真皮」「皮下組織」の3層構造でできています。
さらに表皮は外側から「角質層」「顆粒層」「有棘層」「基底層」に分かれています。
表皮をつくる細胞の約95%はケラチノサイト(表皮細胞)が占めていて、残りの約5%はメラノサイトやその他の細胞でできています。
ケラチノサイトは基底層で生まれ、有棘層➝顆粒層➝角質層へと押し上げられていき最後は老化角質(垢)となって剥がれ落ちます。
このケラチノサイトが生まれ変わるシステムが、肌の「ターンオーバー」「新陳代謝」です。
表皮は常にターンオーバーを繰り返し、外部の刺激から体内を守る防御壁として働いています。
一方、メラノサイトはやや真皮側にはみ出すように基底層に点在しています。
出典:shq1.org
肌の部位によって異なりますが、基底層にあるケラチノサイト約36個に1個の割合で存在しています。
そして、このメラノサイト最大の仕事がメラニンの生成と言えます。
ケラチノサイトと同様に、メラノサイトが作り出すメラニンも体を守る働きを担っています。
② メラニンの役割
メラニンの最も重要な役割は、紫外線の防御です。
紫外線が細胞の中にある核にあたると、核の中にあるDNAが傷ついたり破壊されてしまい皮膚がんや日光による障害がおこります。
それらを防ぐためにメラノサイトはメラニンを生成し、周囲のケラチノサイトに供給します。
メラニンを受け取ったケラチノサイトは、核の上方にメラニンを集合させ核帽(メラニンキャップ)を形成します。
私たちが黒い日傘をさすのと同じで、メラニンが黒い帽子となって紫外線を吸収しDNAを守っています。
また、紫外線が肌深部へ侵入するのを防ぐ役割もしています。
その他にも紫外線などにより発生した活性酸素を除去する働きもあります。
2. シミができるメカニズム
肌を守ってくれているメラニンがなぜシミを作る、嫌われ者になってしまうのでしょうか?
シミは
- メラニンの生成が過剰になっている
- メラニンの排出が滞っている
ことが要因でメラニンが肌に沈着してできます。
メラニンが生成され沈着するまでにはいくつかの段階があります。
① メラノサイトが刺激される
メラニンの生成は、メラノサイトが刺激を受け活性化することから始まります。
以下は、メラノサイトを刺激する主な要因です。
● 紫外線
UVA、UVBどちらもメラノサイトを刺激する要因になります。
特にUVBは強いエネルギーを持っているため、肌の細胞やDNAを損傷させ炎症や皮膚がんの原因になります。
通常は紫外線を浴びなければメラニンは作られなくなります。
ただし、強い紫外線を浴び続けるとメラノサイトが活性化したままの状態になってしまうことがあります。
● 活性酸素
活性酸素が発生すると、活性酸素を除去するためにメラノサイト刺激ホルモンが分泌されます。
活性酸素は、紫外線、ストレス、睡眠不足、喫煙、食品添加物、大気汚染、激しい運動などにより発生しメラノサイトを活性化させます。
● 炎症
日焼け、ニキビ、湿疹、肌への摩擦、外傷などによって肌に炎症が起きると、肌を守ろうとしてメラノサイトが活性化されます。
見た目には分からない程度の炎症でも、慢性的に続くことでメラノサイトが活性化されてしまいます。
● ホルモン
女性ホルモンや副腎皮質刺激ホルモンなどは、メラノサイトを直接刺激し活性化させます。
もう少し具体的に説明すると紫外線や活性酸素などにより、メラノサイトに「メラニンを作れ」という指令を伝達する物質が作られます。
その伝達物質をメラノサイトが受け取ると、いよいよメラニンの生成が始まります。
主な伝達物質には
- プラスミン
- エンドセリン
- ヒスタミン
- プロスタグランジン
などがあり、メラノサイトへの刺激が多いほどメラニンの生成も多くなります。
② チロシナーゼが活性化しメラニンの生成が始まる
メラニンには「褐色~黒色のユーメラニン」と「黄色~赤色のフェオメラニン」の2種類があります。
一般にはユーメラニンとフェオメラニンの混合体をメラニンと呼んでいます。
この2種類のメラニンの比率で肌や髪の色調に差があらわれます。
たとえば黒髪の場合はほとんどがユーメラニン、金髪の場合はほとんどがフェオメラニン、赤毛は2種類が混ざった場合となります。
メラニンはアミノ酸の一種であるチロシンが、酸化という化学反応を起こすことで作られます。
この化学反応を起こさせるのが「チロシナーゼ」という酸化酵素です。
メラノサイトが刺激されると、このチロシナーゼが活性化しどんどん酸化反応を起こしメラニンを生成していきます。
メラニンは以下のような段階を経て作られています。
➝システィニルドーパ➝フェオメラニン(黄色メラニン)
チロシナーゼの働きによりチロシンをドーパへ、ドーパをドーパキノンへと酸化させていきます。
ドーパキノンになると酵素の力を借りることなく次々と酸化していき、無色だったチロシンが徐々に黒色化していきます。
そしてドーパクロムを経てユーメラニンは生成されます。
ドーパキノンの段階でシステインという成分が高濃度で存在すると、ドーパキノンはシステインと結合してシスティニルドーパを経てフェオメラニンになります。
日焼け後に肌が黒くなるのはユーメラニンの増加によるもので、シミも同じように黒褐色のユーメラニンが沈着した状態です。
それとは逆にフェオメラニンはシミを作ることはありません。
③ ケラチノサイトにメラニンが受け渡される
メラニンはメラノサイト内にあるメラノソームという器官で作られています。
メラノソームはラグビーボールのような形をしたカプセル状の器官で、その中でメラニンを生成し充満させていきます。
メラノサイトはアメーバのように形を変化させることができ、樹木の枝が広がったような形の突起を持っています。
その突起を通してメラニンが充満したメラノソームは周囲のケラチノサイトへと受け渡されていき、ここで初めて肌の色調の変化が見られるようになります。
さらに、メラニンが過剰に作られるとメラノソームは肥大化していくため、より大量のメラニンがばらまかれる状態になります。
また、紫外線やヒスタミンなど伝達物質の一部は、メラノサイトを活性化させるだけではなくメラノサイト自体を増加させると言われています。
何らかの刺激によるメラノサイトの増加やメラノソームの肥大化もメラニンが過剰に作られる要因と言えます。
④ メラニンが排出できずシミになる
通常はメラニンを含んだケラチノサイトは、ターンオーバーの過程でメラニンを分解しながら最後は垢となって剥がれ落ちていきます。
そのためメラニンが肌に残ることはありません。
しかし、何らかの原因でメラニンを排出することができず肌に沈着してしまったものがシミです。
メラニンの排出が滞る要因としては
- ターンオーバーの低下
- 真皮への沈着
です。
表皮にあるメラニンの排出ルートはターンオーバーしかありません。
ターンオーバーが低下するとメラニンを含んだケラチノサイトがいつまでも肌に居座ってしまいます。
また、皮脂をはじめとする脂質が活性酸素によって酸化してできる「過酸化脂質」も要注意な存在です。
過酸化脂質はメラニンを変質させ、通常よりも色が濃いメラニンに変えてしまいます。
てんぷら油が酸化して黒く変色するのと同じことが肌でも起きている状態です。
さらに、過酸化脂質はターンオーバーを低下させるため色の濃い頑固なシミとして残りやすくなります。
真皮にまで落ちてしまったメラニンも非常にやっかいです。
表皮と真皮は基底膜という膜で分けられていて、通常なら表皮で作られたメラニンが真皮に落ちることはありません。
しかし、紫外線や肌の炎症などによって基底膜が損傷を受けるとそこからメラニンが真皮まで落ち込んでしまうことがあります。
真皮に落ちてしまったメラニンは、垢として排出することが出来なくなります。
真皮に落ちたメラニンはマクロファージという免疫細胞が処理し、血液やリンパ液にのせて最後は体外へ排出されます。
ただ、免疫力が低下していたりメラニンの量が多いと排出がうまくいかなくなり、改善に年単位を要するような頑固なシミとして残ります。
このように①~④の段階を経てシミはできます。
ただ、シミができるメカニズムの全てが解明されているわけではありません。
そのため、現在でもメカニズムの解明や有効成分の研究や商品化が進められています。
3. まとめ
いかがでしたか?聞きなれない言葉も多く少し難しく感じたかもしれません。
シミに対するケアは
「チロシナーゼの活性化を抑える」
「酸化して黒褐色になったメラニンを無色に戻す」
「ターンオーバーを促進してメラニンを排出する」
など、シミの予防をしたいのか、シミの改善をしたいのかによってケア方法や効果的な美白成分が変わってきます。
まずはシミができる原因を理解し、より効果的で自分の目的に合ったケアや化粧品選びに役立てていきましょう。