顔汗でメイクが崩れたり、セットした前髪が顔に貼りついたり、体は暑くないのに顔汗が止まらないという経験はありませんか?
そういう私自身も汗かきで、例えば美容院に行っても顔や頭から汗が噴き出し美容師さんにドライヤーで冷風を当ててもらうという恥ずかしい体験を何回もしています。
汗をかきたくないと思えば思うほど汗が噴き出してくる・・
誰でも汗はかきますが
「顔ばかり大量に汗をかいて困っている」
「周りの人は涼しい顔をしているのに、自分だけ汗だくで恥ずかしい」
「なぜ顔ばかり汗が噴き出してくるのか」
そんな悩みや疑問を解決していけるように、この記事では顔汗の原因と顔汗を止める方法をご紹介していきましょう。
1. 顔汗がひどい原因とは
汗を作り分泌する器官を汗腺といいます。
汗腺には、エクリン腺とアポクリン腺の2種類があります。
アポクリン腺は、脇や外陰部など特定の部位にしか分布していません。
動物のアポクリン腺は、種族繁栄のためフェロモンを出す芳香腺として機能してきました。
しかし、人間の進化とともに機能は退化し現在の主だった働きは不明です。
エクリン腺は広く全身に分布していて、私たちが日常的にかく汗のほとんどがエクリン腺から分泌された汗です。
顔汗もエクリン腺からの汗によるものです。
エクリン腺からの汗には体温調節や老廃物の排泄、肌に潤いを与える働きがあります。
エクリン腺からの発汗にはいくつかの種類があります。
● 温熱性発汗
暑い時や激しい運動をした時など体温が上昇した時に、体温を適正温度に保つためにかく汗です。
体全体から発汗し体温を調節しています。
● 精神性発汗
緊張や不安など精神的ストレスが原因で、脇や手の平、足の裏や顔など局所的にかく汗です。
ストレスにより交感神経が刺激を受けると発汗が促されます。
精神性発汗の場合アポクリン腺も刺激され発汗します。
● 味覚性発汗
辛い物や刺激の強い物を食べた時にかく汗です。
発汗は誰にでも起こる生理現象ですが、顔だけにひどく汗をかく場合には次のような原因が考えられます。
① 運動不足
汗は全ての汗腺から同じ量が出ているわけではありません。
活発に働く汗腺もあれば、休眠状態の汗腺もあります。
実際に、汗を出す能力をもっている汗腺を能動汗腺と呼び、その数は3歳までの生活環境で決まると言われています。
たくさん汗をかいて育った人ほど能動汗腺の数が増えるため発汗量も多くなります。
この能動汗腺の数は、大人になっても増えることはありませんが減ることがあります。
運動不足などで汗をかく機会が減ると、汗腺の機能が退化し休眠状態に入ってしまいます。
特に下半身や腕など心臓から離れていて冷えやすい所や冷えている所は、汗をかいて体温を下げる必要がないため「汗をかく」という機能が低下しやすい部位です。
逆に顔は表情の変化や飲食、会話などで筋肉を動かすことが多いため能動汗腺が多い部位です。
しかし、能動汗腺の数が減ったとしても体は一定の発汗をしようとします。
そのため、他で出せない分の汗まで顔の汗腺に集中してしまうことが顔汗の原因のひとつになります。
② 顔面多汗症
多汗症とは文字通り汗を多くかいてしまう症状をもつ病気です。
多汗症と汗かきの分かりやすい違いは、汗かきは体温調節が必要な時に汗をかきますが、多汗症は体温が上がっていなくても多量に汗をかいてしまいます。
顔面多汗症は、局所性多汗症のひとつで顔に集中して汗をかいてしまうのが特徴です。
局所性多汗症は脇や手の平でもよく見られます。
手汗についてはこちらの記事も参考にしてください。
多汗症の明確な原因は不明とされています。
ただ、ストレスや不規則な生活などで自律神経が乱れ、発汗を促す交感神経が過敏になっていることが原因ではないかと考えられています。
また、遺伝性が強いとも言われています。
両親もしくはどちらかの親が多汗症や局所多汗症の場合には、遺伝から発症していることがあります。
● 局所性多汗症の判断基準
局所性多汗症には2つの判断基準が定められています。
1つ目の基準は、「原因不明の汗が特定部位から出る症状が半年以上続いている」ことです。
2つ目の判断基準として、以下の項目をチェックしてみてください。
- 最初に症状が出たのが25歳以下
- 左右対称に多汗の症状がみられる
- 睡眠中は気になるほど汗をかかない
- 多汗の症状が週に1回以上ある
- 家族や親せきに多汗症の人がいる
- 多汗の症状によって日常生活に支障をきたしている
これらの項目に2つ以上当てはまるものがあれば、局所性多汗症の可能性があります。
③ 更年期障害
更年期とは閉経を挟んだ前後約10年間のことを指します。
個人差はありますが日本人女性の閉経は50歳前後と言われてるため、一般的には45~55歳が更年期の期間になります。
40代半ばくらいから卵巣の機能低下により、エストロゲンの分泌が急激に低下します。
ホルモンバランスの急激な変化が原因で自律神経が乱され、それによって起こる様々な心身の不調を更年期障害と言います。
エストロゲンについてはこちらの記事も参考にしてください。
気温などに関係なく顔がカーッと熱くほてったり多汗や冷え、のぼせといった症状が起こります。
これらの症状は、ホットフラッシュという更年期障害の代表的な症状のひとつです。
現代では20~30代でもホルモンバランスの乱れから、プレ更年期やPMS(月経前症候群)が原因で顔汗が出るといった症状が多く見られています。
2. 顔汗を止める方法
① 有酸素運動
有酸素運動は、休眠している汗腺を目覚めさせて能動汗腺を増やしてくれます。
それによって全身で汗をかくことができるようになり、顔汗の改善につながります。
汗腺を鍛えてその機能を高めることを「汗腺トレーニング」と表現することがよくあります。
例えば、筋肉は使わないと衰えていきますが、筋トレをすると蘇ります。
汗腺も同じで汗をかかないと機能が衰えるため、普段からしっかり発汗する機会を作ることが汗腺のトレーニングになります。
効率よく体温を上げて汗をかくには有酸素運動がオススメです。
ウォーキングや水泳、ヨガなど自分に合った有酸素運動を1日20分以上、週3回を目安に行いましょう。
さらに、汗腺を鍛えることで質の良い汗がかけるようになります。
汗をかくのが嫌な理由に、ベタついて気持ちが悪いということもあると思います。
そう思う方は質の良い汗がかけていないからかもしれません。
質の良い汗は、ほとんどが水分なのでタオルで拭き取った後はサラッとしています。
さらに老廃物を多く含んでいるため、ダイエットやデトックス効果があります。
逆に質の悪い汗は、塩分などのミネラル分を多く含むため拭き取った後もベタベタして気持ち悪さが残る汗です。
ベタベタ汗が出る人は、汗腺の機能が低下しているサインです。
顔汗だけではなく熱中症や体調不良なども起こしやすくなるので要注意です。
また、有酸素運動は自律神経の安定にも効果があります。
ストレスに感じるほどハードな運動は必要ありません。
ウォーキングであれば、少し息は上がっているけど会話ができる程度の早さでOKです。
継続することが一番大切なことです。
② 手足高温浴
手足高温浴は手と足だけを温度の高いお湯に浸けて温めていく入浴方法で、汗腺の機能を高めていく効果があります。
特に手や足は休眠している汗腺が多い部分です。
手足の冷えやむくみを感じやすい方は、汗腺の機能が低下している可能性が大です。
ぜひ取り入れてみてください。
● 手足高温浴のやり方
- 湯船に43~44℃の熱めのお湯を20~30cm程度はります。
- 湯船にお風呂の椅子を入れて座り、膝下と肘下をお湯に浸けて15分ほど温めていきます。
椅子の高さによってはお尻も浸かってしまいますがOKです。
できるだけ膝下、肘下の広い範囲が浸かるようにすると効果的です。
体が冷えないようにタオルなどを巻いておくと良いでしょう。 - 椅子を取り出し、水を足して38~40℃のぬるめのお湯で15分ほど半身浴をします。
● 注意事項
- 入浴の前後にしっかり水分補給をしてください
- 入浴後タオルで拭いた後は、自然に汗を乾燥させてください
暑くて涼みたいところですが、エアコンや扇風機などで一気に冷やしてはいけません。
汗腺が閉じて汗が止まってしまいます。
うちわで扇ぐ程度は大丈夫なので、しっかり汗を出し切ることがポイントです。 - 手足浴の体勢がつらい人は、足浴のみ、手浴のみを一日おきに行っても大丈夫です
手足高温浴は、自律神経のバランスも整えてくれる入浴方法です。
熱いお湯で交感神経を刺激した後に、ぬるめのお湯に浸かることで自律神経のスイッチを副交感神経に切り替えてくれます。
効果を実感するまで2~3週間は続けることをおススメします。
③ ツボを刺激する
顔汗を止めるのに効果的なツボをいくつかご紹介します。
どのツボも3秒ほどかけてゆっくり圧迫し、各5回を目安に行いましょう。
● 後谿(こうけい)
手の小指側の側面にあるツボです。
小指の側面をなぞっていくと出っ張っている骨に当たります。
その骨の真下にあるくぼみで、ちょうど手相の感情線の先端付近です。
骨のくぼみを指方向に向かって押し上げるイメージでプッシュしてください。
指で押しにくい場合はペンの後ろなどを使うと押しやすいです。
● 陰郄(いんげき)
手首の内側にあるツボです。
小指側の手首のシワ付近を触るとコリッとした豆のような骨(豆状骨)があります。
そこから肘の方向に約1.5cmのところにあります。
反対の手の親指で押し込むようにプッシュしてください。
● 屋翳(おくえい)
出典:gogo89.com
胸にあるツボです。
鎖骨と乳首を結んだ線の真ん中にあります。
左右同時にプッシュしてください。
● 大包(だいほう)
出典:tenshinseitai.com
脇の下にあるツボです。
みぞおちから床と水平に体の側面までひいた横ラインと、脇から真下にひいた縦ラインが交わるところにあります。
左右同時にプッシュしてください。
屋翳と大包は顔の汗止めとして昔から使われているツボです。
有名な話が舞妓の高帯です。
舞妓さんは汗で白塗りが落ちないように、通常より高い位置で帯を結んでツボを圧迫することで顔汗を止めているそうです。
これは半側発汗というやり方で、体の上下左右のいずれかを圧迫すると半側で発汗しその反対側の汗を抑えるという反射の一種を利用して発汗をコントロールしています。
体のことを考えると長時間の圧迫は避けたいところですが、ここぞという時など短時間での実践であればかなり効果的な方法です。
胸元に巻いて使う汗止めバンドも販売されているので、気になる方は試してはいかがでしょうか。
ただ、顔汗や脇汗を抑える分、腹部や下半身などほかの部分での発汗が増えるということは頭に入れておきましょう。
また、きついガードルやスキニーパンツなどウエストや下半身を締め付けるような服装が、顔や上半身の発汗を増やす原因になっているかもしれません。
強く締め付けるような服装はなるべく避けた方が良いでしょう。
④ 首を冷やす
顔汗が出そう、顔汗を素早く抑えたい時におススメです。
冷やして汗を抑えるという単純な方法ですが、冷やす場所がポイントです。
冷やすポイントは、太い血管が通っているところです。
首の前~側面には頸動脈という太い血管が通っています。
触るとドクドクしているのが分かると思います。
ここを保冷剤などで冷やすと、効果的に顔周りの体温が下がり汗を抑えることができます。
首の後ろも血管が多くあるため汗を抑えるのに効果的な場所です。
ただ、首の後ろは脳に向かっている大事な血管が多いので冷やし過ぎには注意が必要です。
他にも脇の下や汗腺の多いひたいを冷やすのも効果的です。
⑤ 病院での治療
顔面多汗症の治療になります。
顔面多汗症は手の平や脇の局所性多汗症に比べると、まだ確実な治療法がないと言われています。
● 外用薬
塩化アルミニウムを顔に塗ることで、汗の出口を塞いで汗が出ないようにする方法です。
制汗剤にも使われる成分で薬局や通販でも入手できます。
ただ、濃度によっては痒みやヒリヒリ感といった副作用がでるため、皮膚科で処方されたものを使用するのが安心です。
使用方法が簡単で比較的安価な点がメリットです。
● 神経遮断薬
多汗症の場合、抗コリン薬のプロバンサインという内服薬の処方が多いようです。
これは、多汗症の治療薬として厚労省から認可を受けている唯一の薬だからです。
発汗には、アセチルコリンという神経伝達物質の分泌が関与しています。
神経遮断薬はこのアセチルコリンの分泌を抑制して発汗を抑える薬です。
全身に作用し即効性があるのがメリットです。
副作用として、口の渇きや便秘、眠気などが出る可能性があります。
また、全身の発汗が止まるため熱中症などにも注意が必要です。
● ボトックス注射
ボツリヌス菌を皮膚内に注射することで、アセチルコリンの分泌を抑制して発汗を抑える方法です。
狭い範囲の多汗症に適していると言われているため、額に注射するケースが多いようです。
また、顔面多汗症には対応していない病院もあるため事前に確認しておきましょう。
1回で半年程度、効果が持続します。
他にも外科的手術などがありますが、まずは上記の治療法を行って様子を見るのが一般的な治療の流れになっています。
顔汗の原因が精神的なところにある場合は、専門家に相談するだけでも不安や緊張の軽減になるかもしれません。
気になる方は専門機関を受診してみるのも良いでしょう。
3. まとめ
いかがでしたか?
顔汗の原因にも様々なものがありましたね。
時には「私、汗かきなんです!」と開き直ることで、顔汗の不安や恥ずかしさを軽減することもできます。
普段から汗をかく練習をして、いざという時はツボ押しや保冷剤を活用して顔汗を解消していきましょう。