女性ホルモンの一つとして有名なエストロゲンですが、具体的に私たちの体内でどんな役割を果たしているかご存じですか?
この記事では、エストロゲンの効果についてわかりやすくまとめています。
そして、エストロゲンの分泌を増やすためにはどうすればよいのか、その方法をいくつかご紹介しましょう。
1. エストロゲンとは?
エストロゲンとは、卵巣や胎盤、副腎皮質などから分泌されるステロイドホルモンの一つです。
エストロゲンが分泌される仕組み
エストロゲンの分泌をコントロールしているのは、脳にある視床下部と下垂体になります。
出典:sofy.jp
視床下部は常に血中のエストロゲンの濃度を監視しており、成長時期や生理周期など必要に応じて性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)というホルモンを分泌します。
GnRHが分泌されると下垂体が刺激され、卵巣刺激ホルモンと黄体化ホルモンというホルモンが分泌され、卵巣に女性ホルモンを分泌するように促します。
このような手順を経て卵巣はエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)と呼ばれる女性ホルモンを分泌するというわけです。
エストロゲンの分泌量の変化
エストロゲンは常に同じように分泌されているホルモンではなく、時期によって様々な変化があります。
一つは、人の成長に合わせた周期です。
女性の場合、初潮を迎えるころからエストロゲンの分泌量が増え始め、卵巣(卵胞)の発達がピークを迎える20代で、エストロゲンの分泌量もピークを迎えます。
その後、緩やかな減少をたどり、50代を過ぎた辺りから急激に減少し閉経を過ぎるとほとんどエストロゲンの分泌はなくなります。
これは、排卵を繰り返した結果、卵巣内の卵胞の数が減少するために起こる現象です。
卵胞の数が少なくなるほど、エストロゲンの分泌量が少なくなります。
50代前後から見られる更年期障害も、このエストロゲンの分泌量の低下が原因です。
エストロゲンの分泌を促す脳からの指令はあるのに卵巣の機能がそれに応えられないミスマッチな状況が、自律神経を乱すことに繋がり更年期障害を発症させているのです。
エストロゲンの分泌量を変化させるもう一つの要因は、生理周期です。
エストロゲンには、卵胞を成熟させ受精しやすくし、さらに子宮内膜を厚くして受精卵が着床しやすい状態を作るとうい効果があります。
そのため、エストロゲンは排卵前2週間頃からエストロゲンの分泌量は増加し始め、排卵直前にピークを迎えます。
そして、排卵が起こると(妊娠が不成立なら)エストロゲンは一気に分泌量が低下します。
エストロゲンは「美人ホルモン」とも呼ばれている、女性には不可欠なホルモンです。
エストロゲンの分泌量を増やすことで女性にとって嬉しい効果も期待できるといえるでしょう。
2. エストロゲンの作用
エストロゲンには、様々な効果があります。
私たちの体内でエストロゲンが果たしている機能は、実に400を超えると言われています。
今回はその中でも、女性にとって特に大切な効果に限って紹介していきましょう。
① 美しい肌を作る
エストロゲンには、美しい肌を作る効果があります。
肌の潤いを保ち、コラーゲンやエラスチンの生成を促進させることでハリのある肌が作られます。
皮脂の分泌をコントロールする効果もありますので、ニキビの発生や悪化を防いでくれます。
② ツヤのある髪を作る
女性の髪は男性に比べてツヤがあり、美しく見えると思います。
髪の毛のツヤは、髪の毛に含まれるコラーゲンが多ければ多いほどよくなります。
エストロゲンがコラーゲンの生成を促進することで、ツヤのある髪の毛が作られます。
③ 精神状態を安定させる
女性は生理周期によって気分の上がり下がりがありますよね。
それも、女性ホルモンである「エストロゲン」と「プロゲステロン」によるものなのです。
プロゲステロンが気分を不安定にさせてそれをエストロゲンが立て直すという働きになります。
エストロゲンをなるべく多く保っておくことで、気分を安定させることができます。
④ 妊娠を助ける
エストロゲンには、卵子の元となる卵胞を育てて、受精卵が着床するための子宮内膜を厚くするという妊娠に備える大事な効果があります。
逆にいえばそのエストロゲンが不足してしまうと、妊娠のための準備が整えることができず不妊症の原因になってしまいます。
⑤ 骨を丈夫に保つ
私たちの骨は常に破壊と再生が繰り返されており、肌同様に次々と新しいものに入れ替わっています。
その中でエストロゲンは骨の破壊の抑制と再生の促進に関わっており、そのおかげで骨は正常なペースで入れ替わりができています。
エストロゲンの量が不足すると骨の破壊のペースに再生が追いつかずに骨がどんどん脆くなり、最終的には骨粗鬆症になってしまいます。
⑥ 脂質の代謝を高める
エストロゲンには肝臓での脂質の代謝を助ける効果があります。
エストロゲンの分泌が高まっていると、どんどん脂質を代謝して太りにくい身体を作ってくれます。
また、ダイエットに適しているのも、エストロゲンが多く分泌される生理が終わってから排卵までの卵胞期です。
脂質が代謝されやすいこの時期を狙って、運動や食事制限をすることで効果的に痩せることができます。
3. エストロゲンは増やせる?
上述した通り、女性にとって嬉しい効果が沢山あるエストロゲン。
エストロゲンは加齢に伴って分泌量がどんどん低下していきます。
その原因は排卵によって卵巣にある卵胞が減少し、卵巣の機能を低下させているためです。
これは、誰にでも起こる生理的なことなのであらがうことのできない仕方の無いことと言えるでしょう。
しかし、実はそれ以外にもエストロゲンの分泌量を低下させている原因があるのです。
例えば、卵巣への血流不足。
卵巣に栄養がうまく運ばれていない状態では、卵巣の機能を充分に発揮することができません。
他にも、自律神経に乱れがあると脳からのエストロゲンを分泌する指令がうまく伝わらず分泌が滞ってしまいます。
このような原因を取り払ってあげることで、エストロゲンの分泌量をいまよりも高めることができます。
ちょっとした生活習慣の改善で大きな効果が期待できますよ。
また、エストロゲンを外から摂取するというのも改善策の一つになるでしょう。
ここからは、エストロゲンの分泌量を増やす方法について、具体的にご紹介していきます。
4. エストロゲンを増やす方法
エストロゲンを増やす方法は、大きく二つあります。
一つは、体内環境を整えてエストロゲンの分泌そのものを増やす方法。
もう一つは、エストロゲンの類似成分を摂取する方法です。
順に、方法を説明していきます。
1. 体内環境を整えて分泌を増やす方法
① 軽い運動をする
運動によって全身の血流が良くなることで、女性ホルモンを分泌する卵巣にも沢山血液が供給されて、その働きが高まります。
マラソンや筋トレの様な激しい運動をする必要はなく、身体がぽかぽかとしてくる程度の軽い運動で充分効果があります。
二つほど簡単なものをご紹介しましょう。
● スロースクワット
スロースクワットという名前の通り、スクワットをゆっくりやります。
5秒数えながらゆっくり膝を曲げて、また5秒数えながら戻します。
呼吸も膝の屈伸に合わせてゆっくり行いましょう。
20回程度を目安に行うと良いですが、途中で辛くなったら止めましょう。
とにかく、無理は禁物です。
● 足上げ腹筋
上半身を起こして行う腹筋は、女性にとっては少しハードですよね。
そこでおすすめなのが、足上げ腹筋です。
仰向けに寝て、両足を揃えて少し上げて20秒ほどキープするだけの簡単な運動です。
20秒が簡単だったらできるところまで時間を延ばしましょう。
お風呂上がりや寝る前など、運動をする時間を決めておくと習慣にしやすいのでおすすめです。
② 疲労やストレスを溜めない
ホルモンバランスが崩れる原因の多くは、疲労とストレスです。
睡眠不足は絶対に避け、自分なりのストレス発散方法で適度にガス抜きしましょう。
思いつかないという方には、アロマテラピーをおすすめします。
何も考えずに良い香りに包まれていると自然とリラックスでき、ストレスが緩和されます。
特にローズの香りは、月経前症候群など女性特有の悩みにも効果が期待できるとされています。
睡眠の質を高める方法については、こちらもご参考にしてみてください。
2. エストロゲンの類似成分を摂取する方法
エストロゲンという物質は、体内で生成するしか方法ありません。
しかし、エストロゲンと同じような効果を持つ物質は自然界に存在しており、それらを総称して「植物性エストロゲン」と読んでいます。
植物性エストロゲンには「イソフラボン」や「リグナン」、「クメスタン」などの種類があります。
どれも高い抗酸化作用や抗腫瘍効果があり、体内で分泌されるエストロゲンと同様の働きをしてくれます。
● イソフラボンの摂取について
イソフラボンは大豆に含まれていることが有名で、知っている人も多いはず。
豆腐や納豆・味噌など大豆製品であれば何にでも含まれているので、おそらく一番簡単に摂取できるエストロゲンの代替成分でしょう。
しかし、食生活の欧米化によって大豆の摂取量が減っている方も多いというのも事実です。
普段大豆を摂っていないという方は、意識して大豆製品を摂るようにすると良いでしょう。
しかし、ここで気をつけていただきたいのは、イソフラボンをいくら摂っても効果が全く現れない人がいるということです。
イソフラボンは腸内細菌によってエクオールという成分に分解され、それがエストロゲンの代わりとして働きます。
驚くべきことですが、日本人のおよそ半分の腸内にはイソフラボンをエクオールに分解してくれる腸内細菌がいないということがわかっています。
この腸内細菌を持たない方がいくら沢山イソフラボンを摂取しても、体内でエストロゲンとしての効果を得ることは決してできません。
腸内細菌がいるかいないかは、幼少期にどれだけ多く大豆製品を摂取したのかで決まると言われています。
子どもの頃、あまり大豆製品を食べてこなかったという方は、残念ながらイソフラボンを摂取しても意味が無い体質である可能性があります。
現在、イソフラボンをエクオールに分解できる体質なのかどうかを調べる簡易検査が可能になっています。
対応している機関より検査キットを郵送してもらい、検尿することで体質を診断してもらうことが出来ます。
保険が効く検査ではありませんので5000円程度の負担がかかりますが、自分の体質がわからないままイソフラボンを無駄に摂取することを避けるためには、先に一度検査をしておくのも良いでしょう。
● リグナンの摂取について
あまり馴染みのない成分かもしれませんが、近年かなり注目度が高まっている栄養素です。
多く含まれている食品としては、近年注目され始めたのアマニ油の原料である亜麻、ゴマやライ麦・ブロッコリーなどです。
特に、食品の中ではゴマがリグナンの含有量が一番多いと言われています。
しかも、ごまは料理やお米の上から振りかけるだけで普段の食事の中でも簡単に摂取できますので、おすすめです。
また、亜麻もリグナンの含有量が多いので積極的に摂取したいところです。
アマニ油にもリグナンは含まれていますので、普段料理で使用する油をアマニ油に替えると自然に摂取できるでしょう。
しかし、アマニ油ばかり摂取するというのも、油の摂り過ぎが気になってしまいますよね。
そこでおすすめなのは、ローストアマニです。
ローストアマニとは、亜麻の実をローストして粒状や粉末状にしたもので、ごまと同じようにあらゆる食事にふりかけて摂取することができます。
サラダやスープなどの食事だけでなくアイスやヨーグルトなどのデザートにもばっちり合いますので、非常に取り入れやすいでしょう。
● クメスタンの摂取について
こちらもあまり馴染みのない成分かもしれません。
多く含まれる食品としては、インゲン豆やライ豆、スプラウトなどが挙げられます。
インゲンのごま和えや味噌汁、スプラウトのサラダにローストアマニをかけるなど、他の植物性エストロゲン食品と組み合わせて摂ることで相乗効果が図れますのでおすすめです。
● サプリメントの摂取について
これまで紹介した植物性エストロゲンは、食事だけでなくサプリメントでも摂取することができます。
食材を揃える時間が取れなかったり食べ物の好き嫌いであったり、とにかく食事によって摂るのが難しいとう方は、無理せずサプリメントの力を借りましょう。
特に、先ほど腸内細菌が無い方はイソフラボンを摂取しても意味が無いと説明しましたが、そこでおすすめしたいのがイソフラボンを分解するとできるエクオールを主成分としたサプリメントです。
腸内細菌が無くてもエクオールそのものを摂取してしまえば、腸内細菌の有無は関係なくしっかりエストロゲンとして働いてくれます。
サプリメントを摂取するときの注意点としては、飲み過ぎないようにするということです。
一度に大量に摂取しても、ほとんどの成分は余って無駄になってしまいます。
毎日適量を飲むことで、常にエストロゲンが多く分泌されている状態を作ることができるのです。
効果を高めたいからと一度に沢山飲むことは、決してしないようにしましょう。
● エストロゲンを活性化する食材
補足として押さえておきたいのはこちら。
エストロゲンの類似成分をを摂取するのではなく、エストロゲンの分泌を促す食材を摂るという方法です。
代表格として挙げられるのはボロンという栄養素。
リンゴやキャベツ、プルーンなどに多く含まれていますので、こちらも合わせて摂取するとより効果が高まるでしょう。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか?
年齢と共にエストロゲンの分泌量は低下し、徐々に女性らしさを失っていくことは動かすことの出来ない事実です。
しかし、その進行を遅らせ、なるべく長く美しくいようとする努力は間違いなく大切です。
食事や運動など普段の自分の生活に少しだけプラスするだけでも、私たちの身体にとって重要なエストロゲンの分泌を促進させることができます。
今回ご紹介した簡単な運動ならば今日の夜からでも始められます。
ぜひ食事とセットで習慣にして、美しい身体作りを目指しましょう。