「乾燥肌・敏感肌にはセラミドを」とテレビCMやお店でもよく目にするセラミドという成分。
スキンケアで保湿重視という方なら、お家の中にセラミド配合の化粧品があるかもしれませんね。
この記事では私たちのお肌に欠かすことのできない、大事な成分のセラミドについてご紹介していきます。
1. セラミドとは?
セラミドは、肌の角質層にある脂質の1つです。
角質層とは、肌の一番外側にある角質細胞でできた厚さ約0.02mmの層です。
セラミドは、角質細胞と角質細胞のすき間を埋めている脂質のことで「角質細胞間脂質」または「細胞間脂質」と呼ばれています。
出典:kao.com
細胞間脂質は、ターンオーバーと呼ばれる肌の生まれ変わりの過程で作り出されていて、セラミドの他にもコレステロール、脂肪酸などで構成されています。
なかでもセラミドは、細胞間脂質のうちの約50%を占める主成分で優れた保湿力をもった成分です。
セラミドを含め細胞間脂質はターンオーバーによって作られるため、加齢や生活習慣などによりターンオーバーが乱れると生産量が減少してしまいます。
では、セラミドにはどんな働きがあるのでしょうか。
2. セラミドの働きと構造
セラミドには次のような働きがあります。
角質細胞間のすき間を埋める働き
セラミドの働きは、よくセメントに例えられます。
角質細胞がレンガで、セラミドがセメントだと想像してみてください。
ただレンガを積み上げて作っただけの壁は、押すとバラバラと崩れやすく、雨が降ればレンガのすき間から水が漏れてしまいます。
一方、レンガとレンガのすき間をセメントで埋めながら作った壁はどうでしょうか?
押されても崩れにくく、すき間から水が漏れることもない丈夫な壁に仕上がります。
実際の角質層も無数の角質細胞が、レンガのように積み重なってできています。
その角質細胞がバラバラにならないように、すき間をしっかりと埋めることがセラミドの働きです。
出典:kao.co.jp
角質層のバリア機能をたすける働き
セラミドによってすき間なく並んで作られた角質層は、紫外線を防御し、細菌や異物の侵入を防ぎ、余分な水分を体内に入れないようにバリアしてくれています。
また、体の水分が外に逃げるのも防いでいるため、私たちの肌や体は水分を保つことができています。
この角質層がもつ「入れない・出さない」働きをバリア機能といいます。
このバリア機能は、すき間のない丈夫な角質層でなければうまく機能しません。
そのため、セラミドが不足していると角質細胞同士の間にすき間ができてしまい、そのすき間から異物が体内に入りやすくなり、体内の水分も外に逃げやすくなってしまいます。
このようにバリア機能が低下している肌は、水分を失い乾燥し、外からの異物や刺激に対して反応しやすくなり、いわゆる乾燥肌、敏感肌の状態です。
つまりセラミドは、バリア機能を維持するために重要な働きをする成分といえます。
角質層の水分保持をする働き
私たちがよく言う肌の水分とは「角質層の水分」を指しています。
セラミドは「ラメラ構造」という特殊な構造により、角質層内の水分を挟み込むように保持することで角質層の水分が外に逃げないようにしています。
セラミドの他にも保湿成分であるNMFや皮脂膜も角質層の水分保持に関与しています。
くわしくは「細胞間脂質・NMF・皮脂膜の特徴と働き」の記事も参考にしてください。
その中でもセラミドは、角質層の水分保持の約80%を担っていて、他の要素と比べて断トツに優れた水分保持能力をもっています。
そのためセラミドが不足すると、角質層は水分保持ができず肌の乾燥を招いてしまいます。
このように、セラミドが水分を保持しながら角質細胞のすき間を埋めることによって、バリア機能が働き私たちの体を守ってくれています。
セラミドのラメラ構造とは
先ほど出てきた、ラメラ構造について説明していきます。
ラメラ構造とは、水の層と脂質の層が交互に重なりあった構造のことです。
「脂質⇒水⇒脂質⇒水⇒脂質」とミルフィーユのように重なってできています。
出典:jp.rohto.com
セラミドは脂質(油)でありながら、水と馴染みやすい親水基という部分をもった構造をしています。
そのため、親水基と親水基の間に水分を挟み込むことで、水分を弾くことなくしっかりとキープすることができます。
また、脂質⇒水⇒脂質・・と交互に重なって層ができているため、水は油を弾き、油は水を弾き、水性の成分も油性の成分も体に入りにくいようになっています。
実はこれがバリア機能の仕組みで、このラメラ構造がバリア機能そのものです。
このように、ラメラ構造をもつセラミドが、肌の水分保持とバリア機能を支えています。
そんな特殊な構造をもつセラミドには、さらに興味深い特徴があります。
ここからは、セラミドの種類についてみていきましょう。
3. セラミドの種類
人の肌の中には、現在確認されているだけで11種類のセラミドが存在しています。
セラミドは、スフィンゴイド類と脂肪酸が結合してできた化合物の総称で、細かく分類していくと300種類以上もあります。
肌の中のセラミドも、もっとあるのではないかと言われていて、働きなど未解明なものも多く現在も研究が続けられている物質です。
では私たちの肌にある11種類のセラミドの働きをみていきましょう。
● セラミド1
- 水分保持機能
- 外部刺激から肌を守る優れたバリア機能をもっている
アトピー性皮膚炎の人は、セラミド1が特に少ないといわれています
● セラミド2
- 非常に高い水分保持機能
肌に一番多く含まれている種類なため、肌の乾燥具合を左右するセラミドです
● セラミド3
- 水分保持機能
- シワを抑制し軽減させる
加齢による減少が顕著なセラミドです
● セラミド4
- 角質層のバリア機能の構築と維持
ラメラ構造の形成に重要な働きをもっています
● セラミド5
- 角質層のバリア機能の構築と維持する
ラメラ構造の形成に重要な働きをもっています
● セラミド6
- 水分保持機能
- シワを抑制し軽減させる
- 正常なターンオーバーを促す
加齢による減少が顕著なセラミドです
● セラミド6Ⅱ
- 水分保持機能
- シワを抑制し軽減させる
- 正常なターンオーバーを促す
加齢による減少が顕著なセラミドです
● セラミド7
- 皮膚の常在菌のバランスを整える
- 細胞の増殖と分化をコントロールする
※分化とは、細胞が特定の働きをもつことです。例えば肌を作る細胞ならそれに適した働きと形をもつようになります。
● セラミド8, セラミド9, セラミド10
- 働きは不明です
どのセラミドも大切ですが、肌に一番多く含まれるセラミド2は保湿力が非常に高い分、不足してしまうと肌の水分量に影響を与えます。
他にもセラミド1、3、6の不足は乾燥肌・敏感肌・アトピー性皮膚炎への影響が強いといわれています。
肌のセラミドは間違った洗顔や肌への摩擦などによっても失われてしまうため、普段のスキンケアでも意識が必要です。
「正しい洗顔の方法」こちらの記事も参考にしてください。
保湿を目的でセラミドを選ぶ際は、セラミド1,2,3,6のいずれか、もしくは全部が配合された物がおススメです。
ただ化粧品に配合されるセラミドは、原料によって肌への効果や成分の表示が異なります。
自分に合ったセラミド化粧品が選べるように、次の章でしっかりチェックしていきましょう。
4. 化粧品に配合されるセラミドの種類
化粧品の原料としてのセラミドは以下の4種類に大別されます。
① 天然セラミド
馬が主流ですが、動物の脳や脊髄から抽出される動物由来のセラミドです。
人の細胞間脂質と比較的近い性質をもっていて、肌に浸透しやすく保湿力に優れているのが特徴です。
低下したバリア機能の改善や、肌荒れの改善に効果があるといわれています。
また、体内のセラミド産生を促進させる効果が期待できます。
化粧品原料としては希少性が高く高価なうえ、効果を出すためにはそれなりの配合量が必要になるため、商品の価格も高くなってしまいます。
※アレルギーの可能性があるため、心配な方はパッチテストを行ってください。
● 成分表示
「ビオセラミド」「セレブロシド」「ウマスフィンゴ脂質」など
② ヒト型セラミド
ヒト型セラミドは「バイオセラミド」ともいい、酵母を利用して生成されたセラミドです。
人の肌に含まれるセラミドと、ほぼ同じ構造で作られているため肌に優しく、浸透性・保湿性に優れているのが特徴です。
肌への馴染みがよく、ラメラ構造の形成にも有用とされています。
刺激が少ないため、敏感肌の方にもおススメです。
ヒト型セラミドは化粧品への配合が難しく生産コストがかかります。
天然セラミドよりは安価ですが、配合量が多ければ価格も高くなりがちです。
● 成分表示
「セラミド1」のようにセラミドの後に数字が付いています。
前の章で説明したセラミドの種類の番号がそのまま付いています。
「ヒト型ナノセラミド(セラミド1)」など
③ 植物性セラミド
米・米ぬか・小麦胚芽・大豆・トウモロコシなど植物から抽出されるセラミドに近い成分です。
米・小麦などは、人によってはアレルゲンとなるケースが少なくないため、最近ではコンニャク芋由来のセラミドが注目されています。
本来のセラミドとは構成が違うため、肌への馴染みやすさや保湿力は天然セラミドやヒト型セラミドと比べると劣りますが、安全性が高く肌に優しいのが特徴です。
天然セラミド・ヒト型セラミドに比べて、商品が安価なものが多いことも植物由来のメリットです。
● 成分表示
「コメヌカスフィンゴ糖脂質」「植物性セラミド」「グルコシルセラミド」「加水分解コンニャク根」など
④ 合成セラミド
合成セラミドは「擬似セラミド」ともいい、石油原料から化学合成されたセラミドに似た構造をもつ成分です。
構造上は似ていても、やはり本来のセラミドそのものではないため、天然セラミドやヒト型セラミドに比べて保湿効果やバリア機能の改善といった効果は劣ります。
安価に大量生産が可能なため、保湿系の化粧品でも多く使用されています。
● 成分表示
「ヘキサデシロキシPGヒドロキセチルヘキサデカナミド」「セチルPGヒドロキシエチルパルミタミド」など
化粧品に配合されるセラミドは、それぞれの種類でメリット・デメリットがあります。
また、どの成分でも人によっては合わないことがあるので、心配な方はパッチテストを行ってください。
違いや特徴を理解し、商品を選ぶ時の参考にしていきましょう。
5. セラミドはアトピーにも効果的?
セラミドはアトピー性皮膚炎にも効果的だ、と聞くことも多いと思います。
実際、皮膚の先生が作ったセラミド配合の保湿剤などもたくさんあるくらいです。
なぜ、アトピー性皮膚炎にセラミドが有効なのでしょうか。
アトピー性皮膚炎とセラミドの関係をみていきましょう。
アトピー性皮膚炎の原因は解明されていないこともありますが、体質的な要因に環境などが強く関係しているのではないかと考えられています。
アトピー性皮膚炎になりやすい体質的要因
● アトピー素因がある
アトピー素因とは、アレルギーを起こしやすい体質のことです。
自分自身あるいは両親や家族に、アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎・喘息・花粉症などをもつ人がいたら、アトピー素因があるといいます。
このアトピー素因はある程度遺伝するといわれています。
※アトピー性皮膚炎だと必ずこの体質だということではなく、また、アトピー素因があってもアトピー性皮膚炎にならない人もいます
● バリア機能の低下
アトピー性皮膚炎の人の肌は、体質的にセラミドをうまく作り出すことができず、乾燥した肌の状態にあることが分かっています。(特にセラミド1が少ないといわれています)
セラミドが少ないため水分の保持がしにくく、バリア機能の低下がみられます。
そうするとアレルギーの原因になる異物や汗、化粧品や紫外線など外からの刺激に反応しやすくなります。
そのため少しの刺激で痒みが出やすく、そこを掻いてしまうことでさらにバリア機能が壊され、ますます刺激を受け炎症を起こすという悪循環がうまれてしまいます。
これら体質的な要因に、様々なアレルゲン、食べ物、ホコリやカビ、不規則な生活など環境的な要因が関わることでアトピー性皮膚炎が発症しやすいといわれています。
セラミドによる効果
アトピー性皮膚炎は薬による治療が基本ですが、日常でのスキンケアにおいては保湿ケアが重要になります。
アトピー性皮膚炎で悪循環がおこる要因の一つはバリア機能の低下です。
セラミドを外から補うことで、バリア機能を改善させる効果が期待できます。
大勢のアトピー性皮膚炎の方にも使われていて、症状が改善されたケースも多くみられます。
セラミドはバリア機能を向上させるだけではなく、高い保湿力、低刺激、浸透力が良いことも優秀な保湿剤の条件だといえるでしょう。
※アトピー性皮膚炎の方は、化粧品も刺激になることが考えられます。不安な方は、使い方やセラミドの選び方などを含め専門医に相談してください。
6. おすすめのセラミド化粧水・美容液
● エトヴォス ベビーローション(化粧水)
優れた保湿力があり、バリア機能の改善を促すヒト型セラミド配合の保湿化粧水です。
ヒト型セラミド1・2・3・6Ⅱの4種類が配合されていて、その他にも保湿力の高い、アミノ酸・ヒアルロン酸なども配合されています。
顔にも体にもOKで、赤ちゃんや敏感肌の方も使いやすい化粧水です。
● エトヴォス モイスチャライジングセラム(美容液)
ヒト型セラミド1・2・3・5・6Ⅱの5種類が、バランスよく高濃度で配合された美容液です。
その他にもアミノ酸・ヒアルロン酸・植物性プラセンタなどが配合され、保湿と整肌効果が期待できます。
シリコン・パラベン・石油系界面活性剤などは不使用で、お肌に優しい低刺激な処方になっています。
肌の機能を向上させる高機能美容液です。
7. まとめ
私たちの肌にあるセラミドという成分が、こんなにも重要な働きをしていたなんて驚きですね。
外からの刺激に負けない健康で丈夫なお肌と、潤いのあるお肌作りには欠かせません。
セラミドは誰のお肌にも必要な成分なので、ぜひスキンケアに取り入れてみてください。